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俺の話を聴け

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監視員のころ6

俺がいた温水プールは、夜間の個人利用は高校生以上しか入れなかった。
子供がいないので、利用者が少ないときは、通常では禁止している飛込みができた。
ある冬の夜、終了時間近くになり、プールが空いてきたので飛び込みの禁止を解除することにした。

俺はタワーの上からコントロールに無線で連絡をした。
パトロールの監視員がスタート台に張ってあるロープを撤去し、コントロールが場内放送をする。
このとき、この場内放送をしたのが、監視員になってまだ日が浅い女の子だった。
女の子といっても、国立大学を卒業して教員採用試験浪人中のこの女性は俺より年上だった。

彼女が緊張しながら放送を始めた。
場内のお客様にお知らせいたします…

本来であれば、只今の時間より飛び込み禁止を解除いたします。という文言が続く。
ところが彼女は、只今の時間より飛び込みを…と言ってしまった。
そしてそこで言葉が途切れた。

タワーにいた俺も、パトロールも、飛び込みの準備をしていた常連のお客も一瞬?という顔になった。

俺たちのようないいかげんな人間であれば、いけね!と小さく叫んで頭からやりなおすところだ。

ところが教師という聖職を目指すこの真面目な女性は、そんないい加減なことはできなかった。
一旦始めたこの放送を、言い直すことなく自分の言葉で最後まで伝えようと考えたのだ。…多分。

3秒ほどの沈黙のあと、彼女はきっぱりとこう言った。

…なさっても結構でございます。

一瞬の間があって、俺たちもお客も爆笑した。
彼女の放送で、プール内はほのぼのとしたいい空気になったが、彼女だけは怒ったような困ったような顔のまま固まっていた。
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2008/06/23(月) 12:12:37 昔のこと トラックバック:0 コメント:1
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コメント

力作の後はこんな感じのも良いですね。
  1. 2008/06/23(月) 13:06:38 |
  2. URL |
  3. yota #-
  4. [ 編集]

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